(3) ハード面とソフト面の改善策の検討

・ 逃げ地図ワークショップの成果および現場での点検結果を踏まえて、避 難に関するハード面(避難場所や避難経路等の整備)およびソフト面(避 難情報の周知や避難訓練の方法等)の両面について改善策を検討する。

・ 改善策の検討にあたっては、要援護者の避難について十分に留意する必 要がある。また、昼間だけでなく、夜間の避難についても想定する必要 がある。

・「まちの安全点検マップ」というまち歩きからまちの危険箇所を素早く 整理できるツールは、まとめたマップを活用して改善策を検討するシー トやカードも用意しており、避難に関する改善策の検討にも活用できる。

まちの安全点検マップづくり

(1) 逃げ地図の展示

・ 作成した逃げ地図は、逃げ地図WSの参加者で共有するだけでなく、学 校や集会所等の公共施設等に展示して、地域コミュニティの構成員に対 し幅広く周知することが望ましい。

・ 展示する逃げ地図は、逃げ地図WSで作成された手書きの成果を展示す るだけでも効果的であるが、書かれた内容を的確に伝えるには、その目 的を留意しつつ、書き直すことが望ましい。

(2) 逃げ地図の配布

・ 作成した逃げ地図から見出された課題やポイントに着目して書き直し (リライト)、コンパクトにまとめる。

・WS 中に出たコメント(ポストイット)を、その内容ごとに以下の5つ に分類して整理すると分りやすい。内容ごとに色分けするのも良い。

1地区の概要(茶色) 2震災時等の記録(緑) 3計画事業等(青) 復興事業・防災計画等 4避難時のポイント(黒) 5検討課題(赤)

(3) 逃げ地図のリライト

手描きの逃げ地図をパソコンを使って編集しておくと、印刷をしたり情報 を共有するときに便利である。ここでは、Illustrator、Photoshop を使っ た逃げ地図のリライトの方法を示す。

1 WS 直後

・ワークショップで作った逃げ地図の写真を撮る。コメントの書いてある ポストイットが貼ってあるものと、ポストイットを外したもの両方を撮 影する。撮影後はポストイットを貼り直す。

・撮影したデータは Photoshop 等を使い、トリミングや歪みの修正をし ておく。

2 色塗りのデータ化

・WS 前につくったベースマップをもとにつくる。

・ベースマップのイラレデータで、新しいレイヤーをつくり、ワークショッ プの逃げ地図画像(ポストイットなし)を取り込む。

・画像のサイズを調整し、ベースマップに合わせる。

・画像の透明度を調整し、ベースマップが見えるようにする。

・色塗り用レイヤーをつくる。

・ペンツールで画像に合わせて道に色を塗る。

緑:C 100% , M 0% , Y 100% , K 0% ,

黄緑:C 50% , M 0% , Y 100% , K 0%

黄色:C 0% , M 0% , Y 100% , K 0% ,

橙:C 0% , M 50% , Y 100% , K 0%

赤:C 0% , M 100% , Y 100% , K 0% ,

紫:C 50% , M 100% , Y 0% , K 0%

茶色:C 500% , M 100% , Y 100% , K 50% ,

黒:C 100% , M 100% , Y 100% ,K 100%

・その他避難場所(◯,◎)、避難目標ポイント(●)、避難方向(→)もマッ ピングする。

3コメントの分類と記入

・WS 中に出たコメント(ポストイット)を、その内容ごとに以下の5つ に分類する。

1地区の概要(茶色) 2震災時等の記録(緑) 3計画事業等(青) 復興事業・防災計画等 4避難時のポイント(黒) 5検討課題(赤)

・分類した意見は、上記の色の文字で地図に載せる。右の図のように、透明度 30%ほどの白塗りの四角を背景にする と見やすい。

・ 場所が限定されている意見は、関連する場 所(ポストイットが貼ってあった場所)に載 せ、その地区全体に関する意見はまとめて載 せる。

4レイアウト

・タイトル(○○市○○町逃げ地図 等)

・ワークショップ開催日、地図作成日、主催・ 共催・後援・協力者等

・縮尺、方位、逃げ地図のカラーバー

・凡例(緊急避難場所、避難目標地点、避難方向、高台、海面・水面、コメ ント色分け 等)

以上を地図に載せ、レイアウトを整える。

(1) 逃げ地図を活用した避難訓練

・ 作成した逃げ地図を活用して、市町村が指定した緊急避難場所や身近な 避難目標地点に避難する訓練を合同して行い、避難行動を共有すること が望ましい。その場合の避難訓練の方法としては、防災無線等で避難開 始を合図し、参加者がそれぞれ決められた避難場所等に移動して避難時 間を確認する方法が容易である。

・ 定期的な防災訓練では、会場を避難場所に見立てて、そこまでの避難経 路と避難時間を確認するとともに、集合した会場で、作成した逃げ地図 とその内容を紹介して要点を説明する方法もある。

(2) 避難訓練においてデータを収集する

・ 予め定められた時刻に避難を開始して、予め定められた避難場所に集合 する場合は、簡単なアンケートを行い、避難に要した時間や参加者の属 性等を把握することが望ましい。

(1) 逃げ地図を活用した避難計画の作成

・ 逃げ地図WSを主催した自主防災組織又は自治会等の協議会において、 作成した逃げ地図を活用して、次の事項について主体的に検討し、市町 村と協働して避難計画を作成することが望ましい。

1緊急避難場所(高台の避難広場、津波避難ビル等)の指定
2避難通路・避難階段等の整備
3避難行動要支援者の避難方法
4災害時における避難に関する協定
5旅館など事業者の観光客への周知活動
6避難訓練の方法

 

(2) 避難に関する発令時に留意した避難計画の検討

・大雨等に伴う洪水や土砂災害等、気象条件の変化に応じて避難勧告・避 難指示等を発令する災害については、その発令時の状況や住民に求めら れる行動を念頭に、どこにどのように避難するかを検討することが重要 である。

(1) 地区防災計画とは

・ 地区防災計画は、東日本大震災の経験を踏まえて改正された災害対策基 本法の第 42 条に定められた制度であり、地区の住民や事業者が市町村 防災会議にその素案を提案することができる。

・ 地区防災計画に定める事項は、特定されておらず、緊急避難場所の指定 や避難行動要支援者の対応から災害発生時の住民と事業者の相互支援な ど地区の防災活動を広く対象としている。

・ 市町村防災会議は、地区防災計画を定める必要性を判断した時は、市町 村地域防災計画にその地区防災計画を定めなければならない。

・ 市町村地域防災計画に地区防災計画が定められた場合は、地区の住民や 事業者はその計画に従って防災活動をするよう努力義務が課せられる。

(2) 逃げ地図作成から地区防災計画の立案

・内閣府災害対策法制企画室長として地区防災計画制度等の災害対策基本 法の改正を担当した佐々木晶二氏の「政策課題別都市計画制度 徹底活 用法」(ぎょうせい)によれば、逃げ地図の作成から地区防災計画の立 案のプロセス案は、以下の通りである。