(1) 土砂災害からの逃げ地図の作成にあたって

・土砂災害は災害の規模や発生時刻の予測が難しいが、逃げ地図ワーク ショップを通して、その地域の土砂災害の潜在リスクや脆弱性を認識し て、事前の対策を講じることは重要である。

・土砂災害から逃れるには、気象警報に注意し、自ら得た土砂災害の前兆 現象等に基づき、自分から安全な場所へできる限り早期に避難すること が最も重要である。

・すでに大量の降雨があり、がけがすでに崩壊あるいは避難経路ががけ崩れで通行不能等、外部へ避難すると逆に危険なケースもある。
土砂災害特別警戒区域内にあっても2階建て以上の鉄筋コンクリート造の建物であれば、建物内にとどまり、がけ斜面と反対側に避難すれば安全であるとされている。

・土砂災害からの避難場所は、避難開始のタイミングに応じて検討する必要がある。

1避難準備情報時:要援護者を車などで計画された避難場所へ避難
2避難勧告時:避難警戒区域外への避難
3避難指示時:安全な建物の安全な場所又は避難警戒区域外

(2) 土砂災害から安全な避難場所とは

・土砂災害警戒区域外

・土砂災害危険箇所からある程度離れたがけ上又はがけ下

安全ながけ上:がけの上端から 10m を超えた場所

安全ながけ下:がけの下端からがけの高さの2倍(最大 50m)を超えた 場所

(3) 土砂災害からの逃げ地図作成の手順

1 土砂災害警戒区域等の想定危険区域を地図上で確認する ・各都道府県が公開している土砂災害警戒区域と土砂災害危険箇所の

地図情報を入手する。

・土砂災害警戒区域(および土砂災害特別警戒区域)の位置や範囲を 把握して、ベースマップに記す。

・土砂災害危険箇所(土石流危険区域、急傾斜地崩壊危険区域、地滑 り危険箇所等)の位置も合わせて参照することが望ましい。

・過去に崖崩れや地滑り等が発生した地域では、小規模でもその履歴 や位置を予め把握しておくか、WS のグループワークの際に、地域 住民からの発生箇所や状況を確認し、地図に記すことが望ましい。

2 避難目標地点の設定

・土砂災害からの逃げ地図は、避難勧告時を想定して作成する。

・避難目標地点は、雨風をしのげて一定の時間滞在可能な屋内の避難 場所について、土砂災害ハザードマップと建物の構造・階数の両面 から設定する。

安全な場所→「(2)土砂災害から安全な避難場所とは」参照

安全な建物→鉄骨鉄筋コンクリート造の堅牢な構造で2階建て以上の 建物

・土砂災害警戒区域内にあっても「安全な建物」は、緊急避難場所に なりうるが、逃げ地図作成にあたっては、土砂災害警戒区域外の避 難目標地点を設定して検討する。

・公的施設だけでなく民間施設(ホテルや民家等)も避難場所として 考えられるが、設定する場合は関係地権者との合意形成が必要とな ることから、公的施設と民間施設では色を変えて区別できるように すると、その後の議論に役立つ。

3 避難障害地点を設定する

・土砂災害警戒区域内および土砂災害危険箇所は通行上危険性が高い。したがって、避難障害地点として×印を記して通行不可とし、そこ を避ける経路を選択する。

4 避難時間を可視化する

・避難目標地点から逆算し、単位時間ごとに色分けを行う。歩行速度 を 43m /分として色分けを行う。

・一般に夜間の歩行速度は昼間の 80% 程度低下することから、歩行速 度を 34m /分として避難時間を可視化する。雨天時の避難速度もあ る程度低減するものと思われる。

5 避難方向の図示

・避難警戒区域外への避難方向の検討後、一定時間とどまる避難目標 地点への避難方向に矢印を入れる。逃げ地図自体はあくまでドライ に最短ルートの避難方向を図示する。